メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

警官の暴力について:銃社会をどうやって脱却するか?

報道されている通り、5月25日に黒人のGeorge Floyd氏が警官の過剰な行為により死亡した。これはミネソタ州ミネアポリスでのできごとだ。動画で流布されている通り、この事件はひどい。抗議デモが全米のみならず、世界各地で行われ、今のところ止まる気配はな…

Covid-19の今後 (7)

(前回から続く) 以前本ブログでも述べたことがあるが、国防と防疫は同じような考え方に立脚している(いつの記事か忘れたが)。このコロナウイルスの流行でそのことを痛感している。 Youtubeで長谷川、高橋両氏のサイトでワクチンをめぐる諸問題を論じてい…

Covid-19の今後 (6)

(前回から続く) 少しメモ、雑記の類を書いておく。 国民皆PCR 5月17日の日本での新規感染者数は50名となっている(東洋経済のデータによる)。同日のPCR検査数は約5,000件。ここに至ってPCR検査を増やす必要性は全く無く、むしろ有害だ。検査体制のさらな…

Covid-19の今後 (5)

(前回から続く) 続きを書こうと思っていたら発熱して中断。この時期の発熱は多少の緊張を強いられるので始末に負えない。そうこうしているうちに職場の再開プログラムの第一段階が始まろうとしている。熱は一日で引いたので、続きを書くことにする。 ⒌ 最…

Covid-19の今後 (4)

(前回から続く) ⒋ ADE(antibody-dependent enhancement)がCovid-19で起こるか? 本来抗体は感染を防御するのに役に立つものだ。これは一般的な常識であり、かつ研究者もそのように考えてきた。 ところが特殊なケースで抗体の存在が逆に感染を増強し、重…

Covid-19の今後 (3)

(前回からの続き) ⒊ SARS-CoV-2の感染防御抗原とは(続) コロナウイルスの名前の由来は、丸い本体から突起が出ている様が太陽のコロナに似ていることから命名された。この突起をスパイクと呼び、この部分が宿主細胞表面にあるコロナウイルスレセプター(…

Covid-19の今後 (2)

(前回から続く) ⒉ Covid-19の免疫に関する知見:最初のデータ SARS-CoV-2のヒトでの感染過程での免疫の成立に関するデータは3月12日号のNatureに掲載された。これは武漢の研究グループから出された論文で、Covid-19の信頼できる最初の報告だと思う(注)。…

Covid-19の今後 (1)

約2週間前にCovid-19に絡む記事を書いた。しかしブログの設定変更などの事情のためグラフ付きの文書のアップロードがうまくゆかず、そうこうしているうちに中身が旧くなってしまったので新しく書き直すことにした。 かくいう私自身は3月24日から自宅勤務と…

2019 Biomedical Symposium: Germline Predisposition to Cancer

今年のSt. Judeシンポジウムは"Germline Predisposition to Cancer"のテーマで先週金曜日にあった。 Predispoditionとは日本語にしにくい言葉だが、親から受け継いだがん関連遺伝子の変異が、特定の腫瘍の発症頻度を高めかつ発症時期を早めるということだ。 …

大著 "Origins" を読む

長い時間を費やしてようやく”Origins: How the Earth Made Us"を読了した。これはLewis Dartnellという人物によって著された本だ。Natureの書評に取り上げられていて、面白そうだったので購入した。 "Origins(起源)"とは、ダーウィンの”種の起源”を連想さ…

ジーン・ドライブは世界を救うか?(続き)

(前回からの続き) Nature誌のgene-driveに関する5つの以下の疑問とそれらへの答えをみていこう。 1.そもそもGene driveは有効に働くのか? Gene driveによって有害昆虫を撲滅(または無害化)するということは生態系に対する挑戦である。野外では人の作…

ジーン・ドライブは世界を救うか?

もう4年も前になるが、gene drive(ジーン・ドライブ)という技術に関する記事を挙げておいた。最近のNature誌にこのgene driveのその後の展開に関する記事が載ったので紹介したい。 最初にこの技術について原理をを簡単に要約する。 CRSPR/Cas9によるゲノ…

デニソヴァ人:アミノ酸配列を手掛かりにする

Paleoproteomics(古タンパク学?)の話。 進化という現象に多少の興味があるのでこのブログでも進化関する記事は比較的多く書いてきた。 これまで私が書いた題材の中で最も印象的だったのは、Svante Pääboらによる”ネアンデルタール人のゲノム配列の決定”と…

生物多様性の話題(2):新種探索のコンソーシアム

現在は第6大絶滅の真っ最中である。人類が”生物は絶滅する”ことを発見してから僅か200年余り、この絶滅の勢いは人類が絶滅する以外止めるすべはおそらくない。毎年多くの種が新たに発見されてるが、それを上回る数の生物種が絶滅している。 DNA塩基配列に基…

生物多様性の話題(1):シカゴのフィールドミュージアム

先週シカゴに滞在した際、かねて行きたいと思っていたフィールドミュージアム(Field Museum of Natural History)を訪れた。米国最大級の博物館だ(注)。ミシガン湖に面したシカゴダウンタウンの最南端を固めるように立地している。その巨大なギリシャ・ロ…

平成の終りを飾る上野千鶴子の”祝辞”

あまりにも多くの人々が論評している例の件だ。私が一万キロ東から常々感じていたことを書いてみる。(但し、私は政治学者でもなく、社会学者でもないので、かなり変なことを書いてしまうかもしれない。) このブログのテーマである”主に生命科学と社会を考…

ワクチンが効くのは何年?

これはとてもは大事なことだが、あまりホントのことは知らされていない(注)。 Scienceサイトの4月18日付のニュース記事にこれに対する答えが書いてある。公開記事なので、興味のある方は読まれると良い。 結論を言うと細菌毒素の3種混合、これは破傷風、…

"Reverse global vaccine dissent"

Science誌最新号の巻頭言のタイトルである。”反ワクチン主義を押し戻せ”とでも訳せるか。著者はHeidi LarsonとWilliam Schultz。ともにLondon School of Hygiene and Tropical Medicineの所属で、前者は教授、後者は大学院生。 以下、私なりの翻訳(要約、意…

ミツバチ殺さぬ「殺虫剤」

日刊工業新聞のサイトに”ミツバチ殺さぬ「殺虫剤」を導き出したAIの貢献度”という短い記事が出ている。あまりに短いのでこの住友化学の試みがどのようなものかは今ひとつ定かではない。 先に昨年11月にScience誌に出された同号に出た研究論文の紹介記事を挙…

サンタ・アニタ競馬場、ナカタニ騎手

競馬好きの人には馴染みのある名前だと思うが、サンタ・アニタ(Santa Anita Park)はロサンゼルス近郊にある名門競馬場だ。 3月29日のScience誌のニュース欄に"Wave of horse deaths on famed racetrack poses puzzle"という記事が出た。”名門校競馬場での…

シドニー・ブレンナーのこと

シドニー・ブレンナー(Sydney Brenner, 1,927-2,019)が亡くなった。 シドニー・ブレンナーと会ったのは1,996年のこと。当時私は東京の大学に勤務していたが、ブレンナーがカリフォルニア(サン・ディエゴ)に新しい研究所を作ったと聞いて、手紙を書いたの…

感染を促進する抗体の正体

これに関連する記事は二年前にも書いた。 ジカ熱流行の衝撃 ここ数年世界で問題となった感染症に、エボラ出血熱とジカ熱がある。エボラの場合、感染力、致死性が共にきわめて高く、流行を封じ込めることの重要性に議論の余地はない。一方、ジカ熱自体は致死…

免疫チェックポイント療法の影

本ブログでも以前紹介したが、免疫チェックポイント療法の影の部分について議論が活発化している。これはScience誌のニュースに掲載されたもの。 免疫チェックポイント療法は既に一般に広く知られている。無論これには2,018年の本庶佑のノーベル医学・生理学…

”神経芽種のメカニズムによる分類” 要約と雑感(自然退縮、スクリーニング、福島)【1】

先週号のScienceに”A mechanistic classification of clinical phenotypes in neuroblastoma”と題する論文が出た。これはドイツのケルン大学を中心とした欧州のグループによるものだ。 まず神経芽腫の概観。 神経芽腫(neuroblastoma)は小児においては脳腫…

モンサント襲撃

サイエンス誌のニュース記事によると、先週初めイースターの夜(16日)にイタリア(Olmeneta, Italy)にあるモンサントの研究施設が襲撃された。この場所は北イタリアのクレモナの近く。 襲撃は火炎瓶によるもので、試験用の種子が貯蔵されている低温施設が…

”画期的な”研究費配分新方式?

米国と欧州の二人の研究者が研究費配分の新方式を提唱している。 今や欧州でも米国でも、研究者にとって研究費獲得はたいへんな重荷だ。米NIHグラントの採択率は、2,003年の30%から2,016年の19.1%にまで低下している。欧州でも若手研究者の研究開始のため…

NIH予算は予期しない経済効果をもたらす?

しばらく前に2,018年度のトランプ科学予算について書いた。その際NIHグラントが経済に及ぼす”多少の”寄与について私見を述べた。基礎研究に対する公的資金の投入はどの程度の経済効果をもたらすのだろうか? 昨年ノーベル医学生理学賞を受けた大隅良典のオー…

免疫チェックポイント療法ががんを増悪させるケース

最新号ネイチャーに抗PD−1療法ががんの進行を速めるケースのあることが紹介されている。これでは最近Clinical Caner Researchに発表された二つの論文の内容が述べられる[1, 2]。 免疫チェックポイント療法は全体の20%程の患者に対して著効を示し、がんを"治…

ジカとデング、交叉免疫

フラビウイルス属ウイルスによる感染症は潜行と浮上を繰り返してきた。ごく最近の大きな問題はジカ熱だ。さらに少し前に日本で問題となったのはデング熱だ。 このウイルス群の研究は黄熱以来の長い歴史があって、感染様式、病理発生、免疫・感染防御など、重…

NIH予算の削減

トランプが科学予算の原案を出してきたが、今のところは大統領が勝手に提案しているところで、これからの議会とのやり取りの後に最終的な形をとることになる。 NIH予算について3月29日に、議会公聴会でトム・プライス(Tom Price)保健福祉長官が議員らの質…