メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

Santa Cruz抗体の末路

最近周囲の研究者の間で噂となっていることがある。大手抗体メーカーが政府からペナルティーを科され、年内に抗体事業が閉鎖されるというのがある。 この話はSanta Cruz Biotechnology社(以下SC社、本社ダラス)のことで、単なる噂話ではなく実際にUSDA(米…

“Kennewick Manの埋葬”と“鮭の遡上”

Kennewick Man(ケネウィック人)というのは米国ワシントン州ケネウィックで発掘された古い人骨だ。この骨の帰属を巡って長い間論争が続いていた。 この一件は1,996年にコロンビア川の河原で人骨が発見されたことに始まる。米国では河川は陸軍工兵司令部(Th…

トポロジカルな染色体構造を壊す変異ががん遺伝子の発現を引き起こす(これもエンハンサー)

エンハンサーの話題をもう一つ。 既に”新たなエンハンサーの出現ががん遺伝子の活性化に関与している”ことを示した論文を紹介した。これは約1年半前の仕事だったが、同じT細胞白血病で同じがん遺伝子がさらに新しい機構によって活性化されたとする論文が先月…

”サル学の現在”:エンハンサーから進化を覗く(続き)

これは規模の大きな仕事だ。こうした大きな仕事を理解するには全体の構築を捉えることが必要だ。項目をいくつか立てて要約してみる。 エピジェネティックマーカー 最近の膨大な研究成果から、エンハンサーのactive / inactiveの状況に応じてエピジェネティッ…

”サル学の現在”:エンハンサーから進化を覗く

現在はゲノムの時代(第二次ブーム)だ。ゲノムの特徴から見たときにヒトと類人猿の違いは何かというのは科学者でなくとも素朴に抱く疑問であろう。よくいわれるように、ヒトとチンパンジーのゲノム配列は98%以上が同じであるという。この”98%”という数字…

”サル学の現在”:サルの学習

以前立花隆の書いた“サル学の現在”という本を読んだ。以前というのはもう25年くらい前のことである。この本は相当幅広い層に読まれたらしく、今でも書評や感想を多数ネット上で見ることができる。当時(1980年代)の日本の代表的な霊長類学(サル学)者に立…