メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

”The transformation of oncology" by Harold Varmus

最近のScienceにHarold Varmusによる”The transformation of oncology”と題した巻頭言が載っている。 Varmusは師Michael Bishopとともに1,989年のノーベル医学生理学賞を受けた人物。“レトロウイルスのがん遺伝子が細胞由来である”ことを明らかにした業績に…

近縁人類の交雑:より複雑な実態

わずか二ヶ月前にヒトからネアンデルタールへの遺伝子流入の論文が出たばかりだ。Science onlineに掲載されたネアンデルタール、デニソヴァ人からのヒトへの遺伝子流入が数次に亘っていたという論文は、この分野の驚くほどのスピードを物語っている。どうや…

CRISPR/Cas9に関するUSDA(米農務省)の決定

CRISPR/Cas9を用いて作出された植物に対する米国農務省(USDA)の態度が公表された。 これはAgaricus bisporusというキノコに関するものである。どこのスーパーにもおいてあるキノコで、common white button mushroomとか呼ばれている普通の食用キノコである…

三重の生物学:蜂群のウイルス感染

以前絶滅危惧種の敵は感染症であると書いた。 パナマゴールデンフロッグ(Panamanian golden frog, Atelopus zeteki)というカエルがいる。パナマのシンボル的動物で、中米地域にふんだんに見られたが近年個体数が激減している。このカエルはカエルツボカビ…

合成生物学:ミニマム生物を作る、またはリバース・テクノロジー

合成生物学(synthetic biology)については何度かまとめて書いてみようと思っていたが、そのあまりの間口の広さに辟易して手をつけないできた。しかし最近号のScience誌に巨人Craig Venterが率いるグループから“最小のマイコプラズマを作り出した”という論…

組み換え型蚊のその後:ネッタイシマカの撲滅へ

米国FDAはGMOカ(OX513A)を野外試験を開始するための手続きに入ったと発表した。これはネッタイシマカ(Aedes aegypti)を駆除する目的でOxitec社により作出され、その試験地としてフロリダ州南端の島(Key Haven)が選定された。 このカを野外に放出するこ…

コア施設の重要性

コア施設の重要性について考えてみたい。 コア施設(core facility)とは大学などの研究機関に設けられた共通の実験施設のことだ。日本でも動物実験施設やラジオアイソトープ実験室などを思い浮かべることができる。しかしこのコア施設に関しては米国は日本…