メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ブラジルのジカウイルスの起源

ジカウイルスに起因すると見られる小頭症だが、その最大の謎は“ジカウイルス自体はかなり以前から知られていたにも関わらず、近年のブラジルでの流行で初めて小頭症との関連が現れたのはなぜか?”ということだったと思う。この疑問に答えるための有力な情報…

左右対称な王立ブリュッセル音楽院

ベルギー、ブリュッセルのテロのニュースを聞いてだいぶ昔の記憶が蘇った。 私はブリュッセルを二回訪れている。一回目は1,984年同国ゲントにおける学会のついでであった。このときはアムステルダムからベルギー入りした。ビクトル・ユーゴーが“世界一美しい…

がん細胞でのスーパーエンハンサーの“生成”

前回MYCとdiapauseの話で、MYCは代表的がん遺伝子(oncogene)といったが、正確にはがん原遺伝子(proto-oncogene)だ。すべての内在性のがん遺伝子(がん原遺伝子)は細胞内で正常な機能を持っているが、質的、量的に活性化されることによってがんを引き起…

幹細胞維持におけるMYCの役割

“Mycの発現がない状態で細胞は増殖することなく多分化能を保持する“という論文が出た。たいへんわかりにくい表現で恐縮であるが、もとのタイトルは以下の通り。 “Myc depletion induces a pluripotent dormant state mimicking diapause”, Scognamiglio et a…

ジカウイルスとそれに関連して

俄かに騒がしくなってきたジカ熱である。 ジカウイルス(ZIKV)によると見られる新生児の小頭症の発生がブラジルに加え、つい最近コロンビアでも確認された。コロンビアでの最初のZIKVの検出は昨年9月のことなので時期的にも合っている。こうした疫学的情報…

何が表現型を決めるのか?:肥満マウス出現へのエピジェネティック因子の関与

少し前に書いたサルの自閉症モデルの話題で、エピジェネティック因子の機能の解析は面倒であることを書いた。 1月のCellにTrim28のハプロ不全(haploinsufficiency )でマウスの肥満がおこる個体とおこらない個体があり、この肥満形質の発現に関与する遺伝子…

合成生物学の勝利?

2014年にSanofiが遺伝子改変酵母を用いて生産された抗マラリア薬を上市したときには、合成生物学の勝利であると喧伝された。 昨年のノーベル医学生理学賞で広く知られることとなったマラリア特効薬アルテミシニン(artemisinin)のことである。これはArtemis…