メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

大腸菌の代わりにビブリオを使うだと?

もう何十年も原核生物の代表として使われてきた大腸菌の代わりの細菌が提案されているという話である。 これを提案しているのは例によって人騒がせなハーバードの分子遺伝学者(?)George Churchだ。彼らはVibrio natriegensの増殖の速さに着目した。この細…

やや特殊なライデン観光案内

前回FMTの話にライデン大学の話が出てきたが、ライデン(Leiden)を訪問したときのことを書く。 ライデンはアムステルダムから列車でロッテルダム方面行きに乗って約35分、人口約11万人の大学都市だ。市の中心部は二重の堀に囲まれていて、典型的なオランダ…

大便バンクのこと

刺激的な名称だが大便バンク(Stool bank)というのが始動している。既に世界で4箇所(英、米、仏、蘭)に設置されている。いずれも非営利団体で、最も早く始まったのは米OpenBiome(Massachusetts)である。健常人の“正常な”腸内菌叢をもった人の大便(sto…

研究不正からのリハビリ

このところNature誌で、データの再現性をどう保証するかに関する記事が頻繁に載っている。これは明らかにNature自体の問題意識を反映している。データの再現性は科学界全体における大きな問題である。これはひじょうに大きな概念を含んでいて、ただ単に“不正…

がん治療の手段としてのDNA修復阻害

がんの化学療法は2,000年頃を境として選択的阻害剤の時代に入った。この契機となったのは慢性骨髄性白血病(CML)におけるBCR-ABLタンパクの阻害剤イマティニブ(グリーベック)の成功であった。その後の動きは各々のがんで特異的に活性化されているがん遺伝…

アジア人はマダガスカルのどこまで行ったか?

変なタイトルになったがヒトの移住の考古学の話である。 以前米国で栽培されている米はどこからもたらされたかという記事を書いた。カリフォルニアには中国系や日系の移民がいるので、稲の起源はアジアではないかと思うのは自然だ。しかし米国での稲作発祥の…

ジカウイルス感染のマウスモデル、小頭症は?

3月に載せた記事でジカウイルス(ZIKV)のマウスモデルで小頭症を作ることの重要性について書いた。ZIKVのマウス感染実験については古く1,970に論文が発表されていて、脳のアストロサイトにウイルスが検出されるという極めて重要なデータが出されていた。し…