メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ネコゲノム解析から考える【2】

(半年以上前の前回からの続き) 家畜化の過程を一連の遺伝子群の軽度な機能低下で説明しようとする論文が現れた。これはドイツ、フンボルト大学のAdam Wilkinsらの仕事で、昨年7月遺伝学の専門誌GeneticsのPerspective(展望)に出た[Wilkins et al., 2,014…

ヒト胚操作、ヒトー動物キメラと社会の対応

前回絶滅動物種の復活に関する本を紹介した。そこで用いられる技術はそのままヒトの胚操作に使用可能である。しかし予想された通りヒト杯操作をめぐる深刻な倫理的問題が浮上してきた。今年4月に中山大学(中国)の研究者がProtein and Cell誌にヒトの胚細胞…

"How to Clone a Mammoth" by Beth Shapiro, 2,015(読書ノート)

本書は単に“マンモスを復活させる”という夢物語を語った本ではない。ハウトゥーものでもない。 絶滅動物を復活させることをde-extinctionと呼ぶ。著者は初めに学生に対してde-extinctionを施すとすると、それにふさわしい動物種は何かと問いかける。これに対…

“p53: The gene that cracked the cancer code” by Sue Armstrong, 2,015(読書ノート)[3]

(前回からの続き) 前回p53が“祝福された遺伝子”であると述べた。がん抑制遺伝子としてのp53の研究のピークは1,990年代にあった。しかしp53遺伝子の医学生物学的発見はこれで終わったわけではない。以下にそれらを列挙する。 その一 10年近くも前のことにな…