メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

テロメア維持の機構:(3)ATRXの働き

(前回から続く) テロメアではG4が形成される G-quadruplex(G4)というのは4個のグアニン塩基が同一平面上に配置した構造。ふつう二本鎖DNAが形成されるときに働くのはワトソン・クリック型塩基対だが、G4の場合はフーグスティーン型塩基対(Hoogsteen bas…

マイク・ホンダの引退

2,016年は各国で政治が動いた年だ。大統領選挙に加えて上下両院議員の選挙も行われた。 最近のサイエンス誌にマイク・ホンダの議会からの引退が報じられている。ホンダは日本ではいわゆる従軍慰安婦問題で日本を糾弾する急先鋒として知られているが、ここで…

テロメア維持の機構:(2)ATRXの失活がALTを引き起こす

(前回からの続き) ALT細胞はATRXまたはDAXX遺伝子の変異を持つ ALTを抑制している遺伝子は何か? この疑問に対するヒントは膵神経内分泌腫瘍(PanNET)という稀な腫瘍の解析から得られた。ジョンズ・ホプキンス大学のグループはPanNETではATRXまたはDAXXの…

テロメア維持の機構:(1)ALT

大部分のがん細胞の無限増殖能はテロメラーゼの”再”活性化による がんで認められるテロメア維持の機構(temoere maintenance mechanisms,TMM)が確定したようなのでまとめたい。 テロメア維持といっても大部分のがんではテロメラーゼ(telomearse)の”再活性…

"How to win the Nobel Prize"

Peter Doherty博士がノーベル医学生理学賞(1,996年)を受けて20周年に当たる本年、ノーベル週間に合わせてシンポジウムが昨日(12/9)開催された。 Doherty博士のノーベル賞とは、"for their discoveries concerning the specificity of the cell mediated …

感染症が遺伝子頻度の変化(=進化?)を起こす

近年の種絶滅の原因として感染症が重要であることを何度か書いてきた。隔離された集団に初めてある病原体が流行すると免疫がないために簡単に個体数が激減する。これはヒト集団でも同様で、その例として北米原住民が欧州の病原体と接触した際の人口の激減に…