メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ゴールデンライスをめぐる攻防(2)グリーンピースの反論

グリーンピースはそのウェブサイトでGMOについて以下のように組織としての考えを述べている。 遺伝子工学(genetic engineering, GE)は自然界では起こり得ないやり方で遺伝子を操作することにより、科学者たちが新しい植物、動物、あるいは微生物の創り出す…

ゴールデンライスをめぐる攻防(1)ノーベル賞受賞者たちの声明

6月30日のワシントンポストに107名のノーベル賞受賞者の署名した公開書簡が掲載された。これは環境保護団体グリーンピースによるGMO、なかでもゴールデンライスへの反対運動をやめるように要求したものだ。 グリーンピースの反GMO活動は何も新しいものではな…

リオデジャネイロの熱帯雨林再生:ジャガーネコで決まり?

もうすぐリオデジャネイロ・オリンピックだ。 ジカ熱に対する危惧とかロシア陸上チームのドーピング問題など、あまり競技そのものではないことばかりがニュースになっている。いずれもネガティブな話題だ。たぶんタイミングを合わせたのだと思うが、先々週号…

認可されたデングワクチン:社会への負荷の軽減

デング熱ワクチンの問題については既に言及したことがある。 その問題とはデング熱に特異な現象で、異なる血清型ウイルスによる再感染に際して見られる。デング熱ウイルスには4つの血清型が存在している。一つの血清型に感染し、治癒すると同じ型の再感染は…

GM作物表示法へのNatureの姿勢

米連邦議会では食品中に含まれるGM作物の表示に関する攻防が続いていた。他方で州議会レベルではGM作物の表示義務を課す法案が議論されてきた。これは多くの州で進行している。それらの先頭を切って7月1日にバーモント州ではその表示を義務化する法律が発効…

伝染性腫瘍(2)イヌ可移植性性器肉腫:数千年前から生き続けている驚異の腫瘍

イヌ可移植性性器肉腫(Canine transmissible venereal tumor, CTVT)は名前の通り、交尾によって雌雄の性器の間で腫瘍の移植がおこる。CTVTと前回紹介したタスマニアデビルのDFTDとは”伝染する”という共通点があるが、DFTDとは異なり多くが自然退縮する。こ…

伝染性腫瘍(1)デビル顔面腫瘍性疾患:絶滅の引き金

タスマニアデビル(Tasmanian devil, Sarcophilus harrisii、写真 (St. Louis Zoo))は最大の肉食有袋類だ。オーストラリア南端のタスマニア島にしか生息せず、絶滅危惧種に指定されている。以前はオーストラリアの大陸部にも生息していたらしいが、現在はタ…

カリフォルニア“銃器暴力”研究センター

銃を使った暴力に関する公的な研究機関(California Firearm Violence Research Center)を設置するための法案がカリフォルニア州議会で可決された。深刻な米国の銃犯罪に対処するために州の政治が動き始めたという話だ。 近代的な国家では銃器(武力)は軍…

From “Reading” to “Writing”:ヒトゲノム全合成の企ての”欠陥”、あるいはタマネギ

5月13日付のNew York Times(NYT)に”Scientists talk privately about creating synthetic human genome” by Andrew Pollackという記事が出た。これはポイントが要領よく抑えられた優れた記事だ。 主人公は例によってGeorge Churchだ。記事の内容は今年5月…

最初のジカ熱ワクチン

前回(6月4日)の記事でジカ熱研究で次に求められているのは確立されたマウスモデルを用いてのワクチン開発であることを書いた。僅か一ヶ月の後に、NatureのAccelerated preview(6月28日)にジカウイルス(ZIKV)ワクチンの論文が出た。 Harvard大のDan Bar…