メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

ゴールデンライスをめぐる攻防(2)グリーンピースの反論

グリーンピースはそのウェブサイトGMOについて以下のように組織としての考えを述べている。

遺伝子工学(genetic engineering, GE)は自然界では起こり得ないやり方で遺伝子を操作することにより、科学者たちが新しい植物、動物、あるいは微生物の創り出すことを可能にする。

これら遺伝子が改変された生物(genetically modified organisms, GMOs)は自然界に拡散し、そこにある生物と交雑する。このようにしてもともとGEのない環境を汚染するとともに、将来の世代に予測することも制御することもできない結果をもたらす。

 

要するにグリーンピースは個々のGMOではなく、すべてのGMOに反対しているのだ。

 

さてノーベル賞学者の声明に対するグリーンピース反応は以下のとおりだ。これはグリーンピース東南アジアのWhilhelmina Pelegrina名前で出されたものだ。

”誰かがゴールデンライスを妨害しているというのは誤った認識だ。ゴールデンライスは問題解決の方策としては失敗であり、20年以上研究が行われているにもかかわらず商業生産のめどは立っていない。国際イネ研究所(International Rice Research Institute, IRRI)も認めている通り、ビタミンA欠乏症への有効性は証明されていない。はっきり言って、人々は存在していないものに拘っているのだ。”

”企業はゴールデンライスを誇大宣伝している。それは他のさらに利益を生み出す遺伝子改変作物を容易に承認させるためだ。過去20年におよぶこの高価な実験は結果をもたらさなかった。しかし従来から行われてきた手法(従来法の農業)から目を逸らせる役割を果たしてきた。こうしたお金のかかるやり方に社会が賭けるよりも、我々は栄養不良に対してより多様な食事、公正な食物入手、エコ農業を普及させる必要がある。”

 

代替解決法として:

”栄養不良の唯一の解決法は多様で健康的な食事を普及することだ。人々にエコ農業に基づいた本当の食物を供給することは常用である。それは単に栄養不良を解決するのみならず、気候変動への適応をももたらす。我々はフィリピン国内において、一貫してGEゴールデンライスへの懸念を表明しているコミュニティーが存在することを明らかにしている。こうしたいわば最前線でゴールデンライスを歓迎していない人々に、それが手っ取り早い処方箋であると押し付けることは無責任な態度である。とりわけそれに代わる方法が既に存在している場合はなおさらだ。”

グリーンピース・フィリピンは既にフィリピン側で提携しているNGOや農家とともに、気候変動に抵抗できる農業の普及を行っている。そこには政府と慈善団体が気候変動に耐えるエコロジカルな農業へ投資すること、さらには農民がバランスのとれた栄養に富んだ食事を取り入れることを勧めるためには良い契機となる。こうした活動を通じてGEのためにお金をドブに捨てなくてもすむようにするのだ。”

 

上にように、グリーンピースはまず”ゴールデンライス”なる”良きもの”ものが未だ商品として存在しておらず、この存在しないものに対してグリーンピースが妨害を試みているということは論理的にありえないと主張している。その上で、GMOに替わる方法として、バランスの良い食事を摂るためのエコ農業を広めるためにフィリピンの農民と協力関係に入っていると述べる。一読すると、これは結構なことである。

ここでいう”ゴールデンライスなるものが存在しない”というのはどういう意味か? 彼らの反論に出てくる”存在しない”という意味は、まだ売れる状態になっていないということだ。ゴールデンライスに関していうと、この作物が企業にとって巨大な利益を生み出す存在ではないという事実がある。実はこのことが問題の中心にある。

どういうことか?

 

このシリーズは以下のとおり。

ゴールデンライスをめぐる攻防(1)ノーベル賞受賞者たちの声明

ゴールデンライスをめぐる攻防(3)ゴールデンライスの現在地

ゴールデンライスをめぐる攻防(4)ゴールデンライスの現在地(続)

ゴールデンライスをめぐる攻防(5)その特殊性

(続く)