メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

大著 "Origins" を読む

長い時間を費やしてようやく”Origins: How the Earth Made Us"を読了した。これはLewis Dartnellという人物によって著された本だ。Natureの書評に取り上げられていて、面白そうだったので購入した。

"Origins(起源)"とは、ダーウィンの”種の起源”を連想させるタイトルだが、副題には”いかにして地球が我々を作ってきたか”とある。著者はastrobiology(宇宙生物学)を専門としているということだが、あまり聞いたことがない不思議な分野だ。この本で描きたかったものは、主に地球が現在の姿になる過程で起こった出来事が、どのように我々の文明の成立と変遷(歴史)に影響を及ぼしたかということだ。主に地学的な出来事と、その人類史への影響が語られる。

 

内容を詳しく紹介することは避けるが、章立ては以下のようになっている。

1.  The Making of Us【我々(人類)を作るということ】

2.  Continental Drifters【大陸の移動】

3.  Our Biological Bounty【生き物ができてきた道筋】(訳が困難)

4.  The Geography of the Seas【海洋の地理】

5.  What We Build With【我々は何を材料に建ててきたか】

6.  Our Metal World【我々の住む金属の世界】

7.  Silk Roads and Steppe Peoples【シルクロードと草原の人々】

8.  The Global Wind Machine and the Age of Discovery【地球の風の動きと発見の時代】

9.  Energy【エネルギー】

 

内容が多岐にわたるが、基本的なスタンスは現在の地球の表面が形成される過程で引き起こされた出来事が、人類の辿ってきた道筋にどのような影響を与えてきたかを考察している。それを細部にわたって語る。

実際のページ数は300ページをやや下回っているの。これは英語による科学的な書物の標準的なサイズだ。しかしそこに詰め込まれたものは、地球の発達史から始まり、陸地と海の形成過程、されに文明のあり方を建築、金属、人々の移動(交流と抗争)、大航海時代の開始の要因、さらに現代の最重要課題であるエネルギー等と、およそ人類文明を形成してきたあらゆる側面について論じている。ここで著者に要求される学識を挙げると、地球物理学、地質学、生物進化史(特に人類進化)、化学、鉱物学、金属学、資源学、資源化学、海洋科学、歴史学、地理学等、超人的な範囲に亘る。こうした理由で、私はこの書を大著とみなしたのだ。

他にこうした気宇壮大な書物としてダイヤモンドの”銃・病原菌・鉄”が挙げられる。このような気宇壮大な構想のもとに著された書物を読むと、読書前とは世界が違って見えることが多い。日本人の手による大著としては、惑星物理学者松井孝典による”宇宙誌”が挙げられる。

とにかくこの”Origins"に関して私がその一部を切り取って解説することや、論評することはとても無理で、是非ご自身で一読することをお勧めする。

 

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