メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

ワクチンが効くのは何年?

これはとてもは大事なことだが、あまりホントのことは知らされていない(注)。

Scienceサイトの4月18日付のニュース記事にこれに対する答えが書いてある。公開記事なので、興味のある方は読まれると良い。

 

結論を言うと細菌毒素の3種混合、これは破傷風ジフテリア、百日咳だが、前2者に対する免疫はほとんど終生持続するが、百日咳だけは数年で消失する。

生ワクチンの3種混合、麻疹、風疹、おたふく風邪だが、これも前2者に対する免疫は終生持続する。おたふく風邪のみが10年程度で効果を失う。

したがって、これらに対しては再びワクチン接種を受ける必要がある。

面白いのは(面白くない?)のはインフルエンザワクチンだ。これは約90日で感染防御効果が失われる。米国ではインフエンザワクチンの接種は、流行が始まるかなり前に開始される。例えば9月に接種を受けた人は、流行期の1月、2月には既にそのワクチンによる感染防御能は失われている(笑)。インフルエンザに関しては他にも大きな問題がり、もしワクチン株にかなり近いタイプの感染を受けた場合でも罹患することが多い。しかしその場合でも症状の重篤化は防げるので、やはりワクチンを受けることは有益なのだそうだ。

2016年にWHOで、黄熱ワクチンのブースター接種(初回接種で生じた免疫を増強するための追加接種)の必要性が議論された。これは、過去70年間にワクチン接種を受けた540万人の中で、黄熱に罹患したのがわずか12例であったことを根拠にしている。しかしブラジルの報告では過古35年間に黄熱ワクチンを受けた人のうち、459人が黄熱に罹患したという。WHOが根拠にしたデータがどこから出てきたかよくわからないが、ワクチン接種後10年で感染確率が上昇するらしい。WHOが根拠にした数字は、当該ワクチンによって世界のかなり広い地域が黄熱の清浄地になったことに起因しているらしい。

記事ではあまり詳しく触れられていないが、記事中のグラフによると天然痘ワクチンの効果は一生の間に徐々に低下してゆくようだ。既にワクチン(種痘)を受けている人の大部分は感染防御能が低下している。したがって再び天然痘の流行が起これば大惨事になることは想像に難くない。もっとも再流行の可能性はかなり低いが。

最近接種が開始されたワクチンでは、パピローマウイルス(HPV)ワクチンが優れている。まだ30年程度しか歴史がないが、血中中和抗体は良好に持続している。本当にこのワクチンの日本での再開が望まれる。私見だが、女性が接種を受けるのが普通の考え方だが、女性の代わりに男性がもれなく接種を受けても効果は同じで、その集団(つまり日本人)の女性の子宮頸癌の頻度は劇的に低下する。一考を望む。

 

さて科学的(免疫学的)に重要な課題は、なぜワクチン(病原体)によって効果の持続期間が異なるかだ。これについては何人かの専門家のコメントが載せられているが、いずれも”解らない”と言っている。これがわかれば持続期間を延ばせる可能性が出てくる。

 

(注)無論、知ろうと思えば文献に当たれば良い。しかし何しろ病原体の数が多いので門外漢が自分で概略を知るには無理がある。