メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

生物多様性の話題(2):新種探索のコンソーシアム

現在は第6大絶滅の真っ最中である。人類が”生物は絶滅する”ことを発見してから僅か200年余り、この絶滅の勢いは人類が絶滅する以外止めるすべはおそらくない。毎年多くの種が新たに発見されてるが、それを上回る数の生物種が絶滅している。

 

DNA塩基配列に基づく新種発見の国際コンソーシアムが立ち上げられた。これはカナダのグェルフ大学(University of Guelph)が率いたグループで、International Barcode of Life(iBOL)という。このコンソーシアムの特徴は、生物種の同定をミトコンドリアDNA の中にある1kbの以下の領域(バーコード)の配列決定で種同定を行うものだ。この部分の配列がデータベース上にある配列に該当しなければ、それは新種である。

世界中の生物種の総数は870~2,000万種と見積もられているが、これまでに記載されているのは180万種にしか過ぎない。このコンソーシアムでは200万以上の新種の発見を目指している。特に昆虫については種の同定が手付かずの状態だ。バイオマスとしてみたとき、地球上の昆虫の総量は、野生の脊椎動物の総量を上回るとされていて、それらの種同定は重要である。

コンソーシアムには世界30カ国の研究機関が参加し、計2,500カ所で試料収集を行う(注)。7年間に要する費用は1億8,000万ドルだ(米ドルか加ドルかは不明)。検体の運搬、保存の手間を省くために、現地で核酸抽出と配列決定を実施するのだ。このために力を発揮するのがMinIONと呼ばれるポータブルシークエンサーだ(注2)。シークエンサー自体は携帯電話程度のサイズなのでどこにでも携帯可能だ。現地でバーコード配列を決定し、それをグェルフ大学に送付すれば良い。この転送のためのシステムをシークエンサーの製造元(Oxford Nanopore Technologies)が開発中とのこと。今のところ、すべての工程に要する費用は約1ドル/検体ということだが、さらに安くなる見込みだという。

さて、以上紹介したように現地での採材配列決定(On-Site Barcoding)が安く行えるということだが、このことはアマチュア研究者にとって朗報である。近い将来学校のクラブ活動で新種同定が行えるようになるかもしれない。ドローンを併用すれば面白いアイデアが実現するかもしれない。

 

(注)残念ながら今のことろ日本からの参加は記載されていない。

(注2)この安価なシークエンシング法については以前の記事で紹介した。