寿司ネタの半分が間違った名前で出されている
これはおもしろいニュースだ。ロスアンジェルス(LA)の寿司レストランで出されている寿司のネタの名前が半分ほどが正しくなかったという話。
これはUCLAなどの研究者によって行われた研究でJournal of Conservation Biologyに発表された。代表者はPaul Barberという人物。この人はDepartment of Ecology and Evolutionary Biologyに所属していて、遺伝学的手法を駆使して海洋生物の生態と進化の研究を行っている。この寿司の研究が”海洋生物の生態と進化”にどのような関連があるかはよくわからないが、とりあえず楽しそうだ。
この研究は2,012年から2,015年にかけてLAにある26の寿司レストランで行われた。これらレストランはいずれもYelpやZagatなどのサイトで高い評価を受けている。寿司で用いられる10種(とされる)の魚のサンプルを大学に持ち帰り、ミトコンドリアDNAの一部をPCRで増幅し、配列を決定した。
結果は驚くべきもので、計364検体のうち47%が間違った表示であった。中で最も信頼度の高かったのはクロマグロ(bluefin tuna)でこれは一つも間違いがなかった。サケ(salmon)は約10分の1で間違っていた。オヒョウ(halibut)とキンメダイ(red snapper)に至っては調べた検体の全てが間違いであった。キハダマグロ(yellowfin tuna)も大部分が間違っていて、その多くが実際はメバチ(bigeye tuna)であった。メバチは乱獲のため絶滅危惧種となっている。
一つの店では同じ名前で三つの魚種を供していた。一般的な傾向としては表示している魚よりもより安い(低級な)魚を使っていた。(当然だ。)食品衛生上問題となるのは、似た魚がヒトに感染する寄生虫を持っているケースだ。ヒラメ(olive flounder)はこれにあたる。メバチの場合は高い水銀含有量が問題となる。
ロスアンジェルス郡の公衆衛生担当者は、この研究のことは聞いていたが直ちになんらかの対策をすることは考えていないという。
さてTake-home messageだが、”オヒョウとキンメダイはやめといたほうがいいが、サケは信用できる”となる。
前日にゲノムシークエンシングの話を書いたが、この寿司ネタの場合は単に種の”同定”(探索ではない)なので、PCR→サンガーでよい。安上がりの仕事だ。
(ロスアンジェルス、郊外のファーマーズ・マーケットの海産物)