メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

各国のGM事情

GM遺伝子組み換え)作物(動物)が安全であるためにはどこまでの証拠が必要か?

"Genetic divide"という小さな囲み記事がサイエンス2月10日号に出ている。これはすごく大雑把だがGMOに対する各国の考え方がまとめられていてとても良い。

最初に冒頭の問いに対する答えは、どこに住んでいるか? およびそれが何かによって扱いが違うとする。国によって規制が全く違うということ、それと”食用かどうか”によって規制がかわるということだ。この記事をさらに表にまとめて下に示す。

 

        非食用    食用       

米国      OK     OK

カナダ     OK     OK

中国      OK     OK

インド     OK     ダメ

欧州      ダメ     ダメ

 

米国では綿花、大豆、セイヨウアブラナ(canola)はほぼすべてがGM。加工食品では全体の60-75%がGMを含んでいる。生産者、政府、消費者は概ねGMの安全性を受け入れている。中国は米国とほぼ同等の基準を適用しようとしている。

欧州28カ国は事実上の停止状態(moratorium)となっている。そのうち約3分の2の国々が法的禁止措置を検討中だ。

インドでは全体的には欧州と似たような状況にある。但し、GM綿花はすでに大規模に栽培されている。食用作物の導入に当たっては強い抵抗がある。

この記事では世界の主要農業生産国のみの状況を述べている。さて日本は? 日本は生産、消費とも世界の主要プレーヤーとして認められていないので記事では言及されていないが、GMの安全性は公式には認められれている。しかし反対派による世論形成、あるいは消費者の抵抗感のために国内では栽培されていない。さらには生産者自身がGMを避けようとしている。実際にはGMOから作られた加工食品の多くが輸入されている。

インド、中国のような人口大国ではGM抜きの食料調達には限界があると考えているのだろう。インドでは綿花については既に90%がGMだが、食用作物については2,010年にBt brinjal(殺虫毒素産生能を組み込んだ現地の小型のナス(注1))の認可が頓挫していた。これについては近い将来認可される見込みは立っていない。

昨年GMカラシナBrassica juncea)の安全性試験の結果が揃い、いよいよインドでも食用のGM作物の栽培をスタートさせようとしているが、これもすんなりとは進んでいない。 

 

(注1)熱帯地域でのBt brinjalをめぐる状況についてはしばらく前に書いた