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メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

NBAと大学のサラリーキャップ

米国のメージャースポーツでは各リーグに所属しているチーム間の戦力均衡を図るために、所属選手の年棒総額に上限を設けていることが多い。

その典型的な例がNBA(National Basketball Association)だ。一昨年のリーグチャンピオンシップの覇者、ゴールデンステイト・ウォリアーズGolden State Warriors, Oakland, CA)はステフ・カリー(Stephen Curry)を始めとする多くのスターを抱える超人気チームだ。今シーズンはケビン・デュラント(Kevin Durant)がサンダー(Oklahoma City Thunder, OK)から加わったため、さらにスター揃いのチームになった。しかしこのスーパースター達のサラリーを賄うために中堅選手達の年棒が不足気味となってしまった。サラリーキャップによりチームの年棒総額に上限があるためだ。このためスター達の脇を固める重要な選手の何人かがチームを去ることになった。これが今シーズンのウォリアーズのウィークポイントだと指摘されている。(現時点でのレギュラーシーズンの順位は西カンファレンス1位を保っているが。)

算定基準にしたがって各チームの年棒総額は多寡があるが、今シーズンは概ね7,000万ドル/チーム(円換算で約80億円)であるらしい。選手一人あたりでは平均5−6億円ということになるか。

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メンフィス・グリズリーズの試合前。これで幾ら?)

 

以上はチームの年棒総額に制限があるという話。以下の話は少し違うがやはりサラリーに上限を儲けようという話だ。

米国の大学では、この10年以上にわたるNIHの緊縮予算のため、若手研究者のグラント獲得率が低迷している。初めてR01グラントを獲得するときの年齢がどんどん上昇している。ふつう大学では生命科学系の教員のポジションはNIHグラントの獲得に依存しているので、若手研究者が教員ポジションに定着できないケースが多い。この状態は次代の科学研究を担う世代を育てるという国家レベルでの目標もさることながら、各大学における教育、研究を担うスタッフの不足として弊害が出てきている。

この状態を改善するためのアイデアUCLAChristopher J. Evans教授がネイチャー誌上で提言している。この人物は脳科学研究所(Brain Research Institute)の所長の職にある。上のような問題を解決するために、教授職(Full Professor)のサラリー(年棒)上限を35万ドルに設定することを提案している。これにより総額約175億ドルが浮いて出てくる(2,014年の実績で計算)。この資金で年棒20万ドルのアシスタントプロフェッサーを800人程度雇えるとしている。このための根拠として、現在のカリフォルニア大学(UC)システムの給与水準が高すぎるとしている。比較の対象としているのはNIHであるが、そこでは年棒の上限が18万5千ドルであるという。このUCとNIHの金額そのもの、さらにその両者の間の大きな落差にも驚かされる。一方は高すぎて、他方は安すぎると思う。おそらくUCの教授職はそれほどまでに高いステータスと魅力を持っていること、そのため競争が激しいのだと思われる。

提言している本人はいわゆる部局長の職にある人物なので、こうした大学の運営に関わる諸問題についても影響力があると想像される。したがって年棒はおそらく50万ドルほどにもなるのだろうか。Assistant professor(講師クラスに該当)の20万ドルという金額も日本的基準からするとかなり高い。カリフォルニアの物価水準、給与水準は他の州に比べるとかなり高めであることは理解できる。しかし資本主義的原理、競争原理の貫徹した国柄とはいえ、日本的感覚からすると驚くべき額だ。

 

           カリフォルニア大学システム    NIH*

           現行     提言        現行

Professor       >35万ドル   35万ドル(上限)  18万5千ドル(上限) 

Asssitant professor   20万ドル  20万ドル

 

*: NIHのポジションの名称は不明。

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 (UCLAキャンパス)