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メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

"How to win the Nobel Prize"

Peter Doherty博士がノーベル医学生理学賞(1,996年)を受けて20周年に当たる本年、ノーベル週間に合わせてシンポジウムが昨日(12/9)開催された。

Doherty博士のノーベル賞とは、"for their discoveries concerning the specificity of the cell mediated immune defence"の功績(ノーベル財団による)によるものだ。それはいわゆる免疫のdual recognitionで、抗原認識では外来抗原に加えて自己の主要組織適合性抗原も同時にT細胞に認識される必要があるという発見だ。これは1,973年に発表された。

この業績は私が若い頃に日本語の紹介記事で読んだ記憶がある。”ヘェ〜、そんなすごいことが解ったのか”と感嘆したことを覚えている。後にSt. Jude病院に来てみたら、その感嘆した業績を挙げた人物が同じ階にいるではないか! といってもたいへん気さくな初老の紳士で(当時60歳近くだったと思う)特に偉ぶったところもない。アメリカでは最前線でバリバリやっているボスはだいたい強烈なオーラを発しているものだが、Doherty博士には特別オーラが出ているわけでもない。エレベーターで一緒になっても気軽に話ができるような方だ。ただし、強いオーストラリア訛りには閉口する(例えばトダイイズフライダイ (Tody is Friday) のような)。

昨日のシンポジウムは朝早くから始まり、著名な免疫(特に感染免疫)学者が次々と登場した。最後にご本人が登壇し、とても大雑把に感染免疫の研究史をたどり、自らのデータ(といっても1,980年代のものだが)を少しだけ話され、後半はノーベル賞を獲るにはどうしたらよいか、というなかば冗談、なかば本気の話、それに受賞した後に自分をめぐる世界がどのように変わったかという話をされた。 

Doherty博士は数冊の一般向けの著書をものしているが、その中に"The Beginner's Guide to Winning the Nobel Prize: Advice for Young Scienetists"というのがある。彼はスライドに要約を示してノーベル賞を獲るために心がけることを話した(写真)。興味のある方は下のスライドを読み、さらに本を買ってください。このスライドの項目の中では"Avoid marginal phenomina,,,,"というのが最重要だと思う。

終わりに最近の研究は分量が多くてかなわん、みたいな話になった。”昔はNatureのArticleは全部で4ページ、Letterは全部で3,000語だけだったのが、この頃は全く量が多くて、あれ何て言ったっけ(とフロアに問いかけて)、それそれSupplementary Crap (注、Dataのこと)、あれは酷い”となったところで拍手喝采となった。ビッグデータ中心の最近の科学の風潮には閉口している風であった。フロアの喝采もそれへの共感だったに違いない。

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追記 12/28/16

"Avoid marginal phenomina,,,,"について思い出したことがあるので加えておく。

数年前になるが私の娘が大学を卒業した折に、卒業式の祝辞を述べたのが当時オバマ政権一期目のエネルギー省(DOE)長官だったSteven Chuだ。Chu博士はノーベル物理学賞(1,997年)を受けてる。

そのなかでChu博士は卒業生に送る言葉として、短く”Do something that matters!"と言ったのだ。”大事なことをおやりなさい”ということで、Doherty博士の述べたことと本質的には同じだ。