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メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

オランウータンの話

オランウータンは動物園の人気者である。動作を見ていると実に人間臭い。 

この種が絶滅危惧種として認識されて久しい。現在の総個体数は約50,000頭でこの100年間に80%減少したという。存続が危ぶまれている最大の理由は、熱帯雨林で樹上生活をしていること、またその棲息域が東南アジアスマトラ島ボルネオ島に限られていることである。このため同地域の熱帯雨林の破壊が直接生存個体数の減少につながる。

さて今現在進行している危機はボルネオ島森林火災である。もともとオランウータンの棲む森は泥炭層の上に形成されたものである。泥炭は樹冠の下(日陰)にある間は湿っていて発火することはない。しかし森林の伐採と、エル・ニーニョによる乾燥のため各地で制御不能の火災が発生している。

この泥炭層から火災によって 放出された炭素の量は日本の総年間排出量を上回るというから凄まじい。そもそもこの火災を引き起こした森林伐採は1,996年に当時のスハルト大統領の肝いりで開始されたMega Rice Projectによる。このプロジェクトは食料増産を目的として熱帯雨林の一部(100万ha)を水田に転換しようとするものであった。ところがその結果おこったことは、上のような大規模な森林火災であった。のみならず、今にいたるまでこのプロジェクトで生産された米は出荷されていない。米の生産もままならず、大規模な環境破壊を招いただけであった。

これは完全な失敗プロジェクトであった。

 

オランウータンOranhgutanはヒト科オランウータン亜科に属する類人猿である。(他の類人猿はチンパンジーとゴリラ。)スマトラとボルネオの集団は各々亜種であると考えられている。上に述べたように限られた地域の熱帯雨林で樹上生活している。 

ヒト科の中ではヒトが最も全集団中の遺伝的多様性が低いが、個体数が著しく少ないオランウータンでも亜種が存在するように、遺伝的多様性は相当高い。これはオランウータンが樹上生活するため、群れの間の隔離の程度が高いためであると考えられる。したがって、今後仮に総個体数の回復に成功したとしても、遺伝的多様性は既に相当程度に失われてしまっているとみるべきであろう。

 

早急な森林保全の対策が望まれている。