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メンフィスにて

主に生命科学と社会について考える

新たな感染の流行にワクチンでどう対応するか?

前回紹介したように、最近のエボラワクチン野外試験の結果は良好なものだった。しかしサイエンス誌に時間範囲を大きくとって概観した記事が今月出た。この記事は短いが質が高い [Rivera and Bergers, 2,015]。

 

もしVSV-EBOVが流行の早い段階で導入されたら死亡者数を抑えることができたのではないかという疑問、および今後同様のケースを想定して流行が起こる前に当該ワクチンの第一相試験を終了しているべきである、というのである。

 

VSV−EBOVはザイール株を用いた組換え型弱毒生ワクチンである。同じタイプのワクチンは既に1,995年にKikwit株で作成され、同じウイルス株で攻撃されたアカゲザルでの良好な感染防御が確認されている。この方式の有効性がよく知られていたにもかかわらず、なぜVSV-EBOVの野外試験が遅れたように見えたのか? 

 

エボラワクチンの開発はこのウイルスの発見(1,976年)直後に始まるが、この動きはやがて萎んでしまう。その理由は、エボラウイルスの流行が散発的かつ限局的であったためワクチン開発へのインセンティブが急速に低下したこと、および製薬会社がその市場としての魅力のなさからワクチンに消極的であったことによる。これはマーケーットサイズが小さいことと、これらのウイルスの流行する地域がいずれも貧困国であるためである。

 

余談ながら、このような経済原理に基づいた製薬会社の行動パターンは、例えば新規抗生物質の開発に消極的であったりする。実際これは細菌感染症での死者数を増やし、公衆衛生上の大きな問題となっている。

 

すでに世界には今回のエボラと同様な地域的(さらには世界的)大流行を引き起こす可能性のあるウイルスが複数存在している。これらは、マールブルグ、SARS、MERS、クリミア・コンゴ出血熱、リフトバレー熱である。

 

著者は候補ワクチンの第一相試験を流行開始前に終了しておくことを提案している。これらの費用は公的資金で賄われるべきであると述べている。このことによって第二相の臨床(野外)試験を流行の比較的早い段階で開始できるようにしておくのだ。

 

なお、VSVを用いた組換え型生ワクチンの安全性についても、すでに効力の高い弱毒ワクチンが開発されていることも付け加えたい [Mire et al., 2,015]。